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| ブロック塀に飛び乗ったニャロちゃん |
1軒の家の前に、白黒猫2匹と黒猫1匹がいる。どれも毛ヅヤがよい。とりあえず写真に納めようとかとカメラを構えると、40代と60代と思われるオバチャン2人に声を掛けられた。「写真撮るの?こっちにもいるわよ」。関東の人の言葉をリアルに書き下すのは私には難しいが、だいたいそんな感じだ。
その家が玄関先を猫のエサやり場にしており、ちょうど夕食の時間なので近所の人が様子を見に来ていたらしい。ニャロちゃんと呼ばれている白黒は、はやばやと食事を済ませたらしくて、私がやってきてすぐに餌場を離れ、隣の工務店との間のブロック塀に飛び乗った。そこが定位置らしい。イヌを散歩させているオジサンが路地を通りかり、ブロック塀の上のニャロに「元気か」と声を掛ける。けっこう顔が広い。
カメラを向けると、こっちをじっとにらんで正座のポーズをとってくれる。野良猫なのかとオバチャンに聞くと「ちがうのよ、この先のオタクで飼われてるんだけどたくさん飼っててね、何匹飼ってるかわからなくて、そこから出てくるのよ」という。どうも近所に猫屋敷があるらしい。それも二軒以上。
しばらくするともう一匹、小柄な黒猫がやってきた。そいつはウナギと呼ばれていた。変な名前だ。ニャロと血縁らしい、とオバチャンは説明する。ニャロが塀から飛び降りてきて互いに鼻をくっつけあって挨拶をしている。確かに仲がよい。挨拶を終えたウナギが私の前を通り過ぎて餌場に向かう。機嫌よく直立させた細く長いシッポがくねくねと揺れる。なるほど!
ニャロではないほうの白黒は僕の前にやってきてゴロンと寝ころぶと、体をくねくねさせて甘えてみせた。ところが写真を撮ろうとすると、さっと立ち上がって向かいにあるアパート駐輪場に消えてしまった。撮り損ねた、と口惜しがっていたら「タダじゃ撮らせてくれないわよ」と頭の上から声がした。アパートの2階で階段を掃き掃除している大家らしきオバチャンだった。掃除しながらさっきからの会話を聞いていたのか…。大阪のオバチャンみたいだ。
餌場にはベニヤ板の風除け付きの棚がつくってあって、その中にボス格の巨大なキジ白がいるらしいが、ボスキャラだけあって簡単には姿を現さない。けっきょく餌場の横にある自転車1台がやっと通れる極細の路地を、のしのしと去っていく後姿しか見られなかった。
そしてここからが私的には最大のニュースだ。私の住むマンションの近所では、山手線を挟んで内側に猫おじさん、外側に猫おばさんがいて、夕方になると餌を与えて回っている。おじさんはママチャリの荷台に山盛りの餌と餌皿を積んで出前のようにあちこち走り回っている。おばさんはもう少し小規模だ。なんとこの2人は、山の手線の内側に住むお金持ちの奥さんに雇われて餌やりに回っているのだという。
数学者の広中平祐は、商売人だった父親から「数学が好きなら、商売で金をかせいで数学者をやとってやらせればいいじゃないか」と言われたという。奥さんは誰かに「猫が好きなら、おじさんとおばさんをやとって餌をやらせればいいじゃないか」と言われたのかもしれない。
おじさんはいつもアパートの駐輪場などに勝手に餌皿を置いて去っていくから、苦情が出ないのかと不思議に思っていた。奥さんが強引にアパートのオーナーらを説き伏せて餌を置かせているのだという。いろいろ謎がとけた。
オバチャンたちは巣鴨駅前のハナちゃんのことも観察しているようだ。「今日もいたわよ」という。けっこう行動範囲が広い。寒風の中で30分以上も立ち話をしてダウンジャケットの中まで冷えてきた。また撮りにきますね、と言って餌場を後にしたが、おばちゃんはまだいるようだった。元気だ。

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