2012年1月11日水曜日

1月10日       書き漏らし

   書き忘れていたけど、大晦日、食料の買い出しに行って帰りに駅前を通ったら、いつもの場所にハナちゃんがいた。ふだんは僕に無関心なのに、なぜかしゃがれた声で「にゃあ」といって近づいてきた。

 ハナちゃんは人気者だ。一眼レフを首に提げたお姉さんをはじめ、小動物を可愛がる自分を互いに演出したい若いカップルのほか、酔ったオジサンたちなどにも話しかけられる。なかなかゆっくり写真も撮れないのだが、きょうは寒いからか誰も相手をせずに通り過ぎていく。チャンスだ。

 だが携帯しかなかった。露出が足りずにピントもなかなか合わず3、4枚撮ると指がこごえて痛くなってきた。相手もそこそこに「食べ物は今度やるから、風の当たらん場所に行っとき」といって、飲食街を通り抜けてウチに向かった。だが少し歩くと気付いた。どの店も正月休みなのだ。

 残り物がもらえないのか!
 気付いて振り返ると、遠くの路上にぽつんとハナちゃんの影。レジ袋の中にはぎんに与えるため買った猫缶が4つある。うーん。でも、わしは路上で猫缶を開ける迷惑なオッサンとはちゃうねん… 葛藤。だが寒空に一匹、アスファルトの上で「営業」を続けるハナちゃんを思うと勝てなかった。食べ残しが出なんだらええんやろ。私は引き返した。

 パコ。キリキリキリキリ…。ビーフ猫缶を開けると中指でビーフペーストを少し掬い取って
、路肩の少し基礎が高くなっているところに置いた。一切見未満用の子猫フードなのであぶらっけと汁気が多い。ハナちゃんは無言でやってきて、まったく警戒せず猫缶を食べ始めた。平らげると次の1掬い。また次の1掬い。そうするうちに1缶なくなった。

 指はフードの油分でべとべと。マウンテンパーカにもついてしまった。缶を捨てるところが見あたらないので、手で持って帰ることにした。エサまみれの指で開いた猫缶を持って、信号を待つ姿はかなりヘンだ。帰り着くと玄関が非接触キーでよかった、と初めて思った。ぎんは自分のエサが減ったことにも気付かず出迎えてくれた。


 
 


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