2011年8月22日月曜日

8月21日    夜

 リビングで、うたた寝をして夢を見た。 私は会議場のようなところに併設されたレストランで食事をしていた。

 小便がしたくなったので手洗いに立つと、トイレの入り口になぜか高校生のときに化学を習った田中先生がいて「なんだデートか」とひやかす。「ちがいますよ」と言って中に入ると、小便器からどぼどぼ水があふれ出していた。水はあっという間に床じゅうに広がった。
 
 うわ!靴がぬれちゃうよ!と思っていたら、なぜかラバーカップ(棒の先に大きな吸盤みたなのがついたやつ)を持った福岡伸一がやってきて、これで直るからといって便器の排水口をゴボゴボを押し引きし始めた。すると水が通ったらしく床からも水が退いていった。でも床は汚いようなきがしていやだなあ…などと考えながら用を足そうとしているところで、ブルブルと携帯が鳴って目が覚めた。

 リビングルームはいつの間にか電気が消され薄暗くなっていた。携帯を探し当てると、地元の同級生からだった。あれ~いま何時かな、と寝ぼけた目で柱に掛かったIKEAで買った190円の壁掛け時計を見たら午前2時前。なんて迷惑やなやつだろう。ああ、でも最終版の後にわざわざ掛けてきたんだろうか、なんてぼんやり考えながら携帯の画面を見たら、2時4分前じゃなくてほんとは23時10分だった。ありゃりゃりゃと思っているうちに電話は切れた。体じゅうが汗ばんで、最近いつもそうであるように四肢の先の先までダルかった。

 田中先生はなぜ夢に出てきたのだろう。40ぐらいで亡くなったから、いまは僕のほうがずいぶん年上だ。うたた寝してしまう前に、たまたま懐かしいチャイコフスキーを聴いたからだろうか。うとうとしながらそんなことを考えていると、チャイコフスキーを聴いて化学式を書き写していたあのころに、とんでもない忘れ物をしてきたような気がして、悲しくなった。

 この世の無数のパラレルワールドの中にはきっと、僕がその何かを忘れなかった宇宙も存在しているに違いない。そう考えるとよけいに悲しくなった。その世界はすぐ目の前にあるのに、手を伸ばしてもぜったいに届かない…。

 半分うなされて気づいたら、ぎんがカウンターの上から頭だけを出して、僕を見下ろしていた。そうか。お前はまだ生まれて1年半だし、いいよなあ…と少しほっとした。ぎんはしばらくすると床に下りてきて僕の背中を前足でぽんぽんと2度叩いた。まあ元気出せよ。じゃなくて「遊べ」という合図だ。
 
 しかたないなあ。立ち上がって遊び道具のトンボを探そうとしたとき突然、夢の続きを思い出した。オシッコする途中だったんだ。リビングの扉をガチャンと閉めて廊下に出ると、まん丸の目をしたぎんがこっちを見ていた。

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